議会リポート

2010年3月25日

梶川 みさお

社民党議員団を代表して、議案第1号平成22年度宝塚市一般会計予算について、一部改善の意見を述べて賛成討論を行います。

今回の予算編成については、全体としてよくできていると思いますが、一部気になったことは、やたらと委託事業が多いことです。特に緊急雇用対策事業のほとんどが民間委託になっています。そして、その中には偽装請負の疑いがあるものも見受けられます。

その象徴的なものが学校図書館教育推進事業委託であります。これまで11校に専任の図書館司書を配置していたものが、新年度から36校に拡大されることは大いに評価いたします。しかし、この事業を請負契約で行うことには疑義があります。その仕様書には、各学校に司書を派遣し、教育委員会の指示のもと、兼任教諭や地域ボランティアと連携するとあります。この業務の目的を達成するためには、この仕様書のとおり行うのが当然であると思います。しかし、社員を各学校に派遣して、教育委員会の指示のもとで業務を行うのは、派遣業務であり、民間委託するならば派遣契約でなければならず、これを請負契約にすれば、私がこれまで指摘してきた偽装請負の疑いが濃厚であります。

また、総額1,728万円の業務内容について、週2回、1日4時間の勤務なので、計算しますと時間給にして1時間2千円となります。請負契約であろうと、派遣契約であろうと、会社の利益が少なくても20%と見ても、額にして340万円となります。直接雇用であれば、この340万円も労働者に支払うことができます。

現場の意見を十分に聞かず、安易に委託業者に丸投げするという無責任な市教委の考え方が理解できません。学校教職員や地域ボランティア、学校間の連携が必要なこの事業は、図書館司書を市が直接雇用するべきであります。そうすれば貴重な税金の有効活用ができるとともに、図書館司書も学校職員という立場で、よりよいコミュニケーションを図ることができます。また、司書として自発的な活動も可能となり、子どもたちを取り巻く環境が整うものと考えます。

市教委におかれましては、このことを再度考えて、今後の課題としていただきたく強く要望いたします。

次に、朝鮮学校中級部の児童保護者就学補助金の増額についてであります。

先ほどの草野議員と重なりますけれども、この件については、2008年9月議会に尼崎朝鮮学校長ほか9団体から補助金の増額を求める請願が提出され、採決の結果、賛成22、反対2、退席1という圧倒的賛成多数で採択されています。予算委員会の議論の中で、朝鮮学校で使われる教科書が金正日総書記が確認して決裁されているとか、教室に金親子の肖像画が飾られているなど、朝鮮民主主義人民共和国政府と親密な関係にある朝鮮学校の保護者に税金で補助することに反対する意見がありました。

私たち社民党が確認したところ、教科書の検定は、出版社学友書房が現場の教師や専門家とチームをつくり執筆したものであって、これが全国で使用されており、御指摘の共和国にお伺いを立てることはないとのことでした。

朝鮮学校は、朝鮮史や朝鮮語の授業を除いて、日本の学習指導要領に準拠したカリキュラムをとっています。また、朝鮮学校は都道府県に教育内容を届けており、都道府県は朝鮮学校に一定の助成をしています。さらに、朝鮮学校を卒業した生徒を、国立大学を初め有名私立大学のほとんどが受験資格を認めています。

国際人権法において、朝鮮学校が実施する母国語教育、民族教育は、普遍的人権としての教育に対する権利の一部であると同時に、民族的、宗教的、言語的マイノリティーに属する人々の持つ権利としています。

今、問題になっている高等学校の授業料無償化の対象に朝鮮学校を除外しようとする動きについて、東京新聞が東京朝鮮中高級学校を取材して、直接、生徒にインタビューした記事があります。ある生徒は、拉致問題では共和国も悪いことをしたと思いますが、歴史的経緯があって僕たちはここにいるのだから除外しないでほしい。拉致問題などで変な学校と思われているけれど、私たちは日本の学校と変わりなく普通に高校生活を送っている。無償化には期待していたが、どうしてここまで言われるのかわからないと表情を曇らせたとあります。

私は、2008年12月16日に、私を含めた7名の議員で尼崎朝鮮中級学校を訪問しました。生徒や保護者たちが私たちを歓迎してくれました。幼稚園児や初級学校生徒が踊りを披露してくれましたが、子どもたちの目の輝きは生き生きし、表情が印象的でした。その後、母親との懇談では涙を流して、子どもや学校への思いを話されていたのも印象に残りました。このとき私は、母親と子どもたちが自分の力ではどうすることもできないと確信しました。だから私が彼らの思いを受けて頑張ろうと思いました。

尼崎朝鮮中級学校の運営費は年間1億2千万円です。そのうち月謝収入5千万円、県、市からの助成金4千万円、残り3千万円は保護者からの寄附金です。その財源は、キムチの販売やバザー、売店、チャリティーゴルフコンペなどで捻出しています。このような大変運営が苦しく、教師の月収は何と15万円しかありません。

朝鮮学校に通う子どもたちは3世や4世です。日本に生まれて、日本に育ってきた彼らが日本の子どもたちより不利益な扱いをされても、自分たちではどうすることもできません。

過去の歴史を踏まえながら、納税の義務など道義的、社会的義務を果たしている人たちへ公平、平等の原則に照らして、宝塚市議会がこの請願を圧倒的多数で採択したのです。私は、宝塚市議会の多くの議員の良識ある判断を誇りに思います。そして、そのことにこたえて増額を決断された中川市長に敬意を表したいと思います。

高校授業料無料化の対象から朝鮮学校を除外することや、本来国が補助すべき朝鮮学校への補助金を県や市が行っていることに反対することは、日本が批准している国際人権規約や子ども権利条約に反します。朝鮮民主主義人民共和国政府が行った拉致問題や核問題の矛先を子どもたちに向けることは間違っています。反対される議員もみずから学校を訪問して、直接、関係者と話をして、話を聞くべきだと思います。

私は社民党議員団の一員として、今後もこれら人権に関する問題については、差別されている側の立場に立って議員活動を行っていくことを表明して、賛成の討論といたします。